建設業の労働保険手続きガイド

 

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社会保険労務士宮本事務所

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 労災事故が比較的多い業種である建設業で労働(労災)保険に加入していない事業所が多いことは、ちょっと不思議です。でもこれは、違法でもなんでもなく、労災保険の考え方によります。建設業は現場毎に元請、下請、孫請と重層的な構造になっていることが一般的です。そのため、労災保険では加入義務を受注先の頂点に立つ元請一つだけに課しています。そのため、多くの下請専門の中小企業は労災保険に加入することが免除されています。しかしながら、建設会社には技術部門のほか、営業部門、事務部門があるのが一般的で、それらの部門での業務災害、通勤災害は検討課題と言えるでしょう。また、建設投資の縮小が進む中で、小さな元請工事も拾っていかないと、経営が成り立っていかない実状もあるように思います。そう考えた時、あらゆる建設会社にとって労災保険は無縁ではないように思いますがいかがでしょうか。                              

建設業における労災保険とは?

 労災保険法第3条第1項では、「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。」と定めています。そして、労働保険徴収法第3条では、「労災保険法第3条第1項の適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき、労災保険に係る労働保険の保険関係が成立する。」と定めています。つまり、建設工事が開始されると、一般的には労働者を使用しない工事はありませんから、その事業が開始された日に、労災保険を掛けたことになります。

 

元請負人と労災保険

建設業においては元請負人のみを使用者とみなす旨の規定があります(労働基準法第87条)。よって、元請負人は、その成立の日から10日以内に「保険関係成立届」を提出しなければならず、本来の加入の手続きが済んでいない間に労災事故が発生した場合はには、費用徴収制度が適用されます。

 

労災保険の費用徴収制度

費用徴収制度とは、事業主が労災保険に係る保険関係成立の手続を行わない期間中に労災事故が発生した場合に、被災労働者に支給した労災保険給付額の全部又は一部を、事業主から徴収する制度であり、未手続事業主の注意を喚起し労災保険の適用促進を図ることを目的として昭和62年に創設されました。費用徴収制度の内容は以下の通りです。

  1. 加入手続について行政機関からの指導等を受けたにもかかわらず、事業主がこれを行わない期間中に労災事故が発生した場合、「故意に手続きを行わないもの」と認定して保険給付額の100%を徴収する。
  2. 加入手続きについて行政機関から指導等を受けていないが、事業主が事業開始の日から1年を経過してなお加入手続きを行わない期間中に労災事故が発生した場合、「重大な過失により手続きをおこないわないもの」と認定して費用徴収の対象とし保険給付額の40%を徴収する。

なお、法令違反が原因で発生した労働災害も費用徴収の対象とされています。

 

労災保険関係成立票

労働保険徴収法第74条では、「労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち建設の事業に係る事業主は、労災保険関係成立票を見やすい場所に掲げなければならない。」と定めています。掲示すべき内容は、次の項目です。

  • 保険関係成立年月日
  • 労働保険番号
  • 事業の期間
  • 事業主の住所氏名
  • 注文者の氏名
  • 事業主代理人の氏名

このほか、「建設業の許可票」と「建築基準法による確認済」の掲示が建設業法等により義務付けられています。

 

労災保険における継続事業と有期事業

事業終了の時期が予定されていないものが継続事業で、終了が予定されているものが有期事業です。一般の事業は、工場であっても商店や飲食店、あるいは病院等であっても、その終了の時期は予定されていません。事業の廃止(廃業)又は倒産等にならない限り事業は続けられます。これに対し、建設工事が典型ですが、その終了の時期(工期)が予定されているものが有期事業です。建設工事以外では、林業のうち立木伐採の事業等がこれに当たります。

建設工事は有期事業のため、労災保険に加入する手続きが継続事業の場合と異なります。原則として、当該工事が行われる場所を管轄する労基署において手続をします。なお、有期事業には、単独有期事業と一括有期事業があります。

 

労災保険における単独有期事業と一括有期事業

労災保険料の概算見込額が160万円(または確定保険料100万円)未満で、かつ、請負金額が1億9千万円未満の場合、一括有期事業として取り扱われます。取りまとめることができる要件は次の通りです。

  1. そのぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体若しくはその準備の事業であること。
  2. それぞれの事業が、事業の種類を同じくすること。
  3. そのぞれの事業に係る労働保険料の納付の事務が一の事務所で取り扱われること。
  4. 厚生労働大臣が指定する種類の事業以外の事業にあっては、それぞれの事業が、前号の事務所の所在地を管轄する都道府県労働局の管轄地域又はこれに隣接する都道府県労働局の管轄区域内で行われること。

 

労災保険の単独有期事業

一括有期事業に該当しないものは、単独有期事業といい、工事ごとに工事現場の所在地を管轄する労基署で保険関係を成立させることになります。そして、工事終了の都度、保険料の精算を行います。また、有期単独事業は、その工事単独でメリット制の対象となるほか、厚生労働省労働基準局長名による全工期無災害表彰の対象となります。

 

労災保険の一括有期事業

一括有期事業の場合には、工事開始の都度、その開始の日の属する月の翌月10日までに、「一括有期事業開始届」を所轄労基署長に提出しなければなりません。また、継続事業と同様に毎年7月10日までに年度更新手続きをしなければなりません。すなわち、新年度の概算保険料の申告・納付と、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付手続をしなければなりません。その際、「一括有期事業報告書」に「一括有期事業総括表」も合わせて提出することとされています。

 

労災保険の一元適用事業と二元適用事業

建設事業は一般に二元適用事業です。

労働保険には、労災保険と雇用保険があります。これを両方一括して保険関係を成立させるものを一元適用事業といい、一般産業はこれが主です。しかし、建設事業は、複雑な下請関係があり、労災保険は元請が現場全体を一括して掛けますので、下請は原則として労災保険を掛けません。反面、雇用保険は元請と各下請それぞれが個別にかけることとなりますので、扱いを分けているわけです。

なお、建設業の下請であっても、もっぱら下請としての事業のみを行っている場合には、雇用保険だけを掛ければよく労災保険は掛ける必要がないわけですが、事務員や営業部員は、現場の労災保険の適用を受けませんので、別途独自に労災保険を掛けることになります。その結果、その人たちについてだけは一元適用事業となるものです。

 

労働安全衛生法の特定元方事業開始報告

特定元方事業開始報告とは建設工事を始めた旨の元請から労基署への報告です。

労働安全衛生法第100条では「厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。」と定めています。これを受けて安衛則第664条では、次のように定めています。

 

特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときは、当該作業の開始後、遅滞なく、次の事項を当該場所を管轄する労働基準監督署長に報告しなければならない。

  • 事業の種類並びに当該事業場及び所在地
  • 関係請負人の事業の種類並びに当該作業場の名称及び所在地
  • 労働安全衛生法第15条の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならないときは、その旨及び統括安全衛生責任者の氏名
  • 労働安全衛生法第15条の2の規定により元方安全衛生管理者を選任しなければならないときは、その旨及び元方安全衛生管理者の氏名
  • 労働安全衛生法第15条の3の規定により店社安全衛生管理者を選任しなければならないときは、その旨及び店社安全衛生管理者の氏名(安全衛生管理法第18条の6第2項の事業者にあっては、統括安全衛生責任者の職務を行う者及び元方安全衛生管理者の職務を行う者の氏名)

この規定では、工事の規模を限定していませんので、下請を使う建設工事を開始する際には、その工事の規模に関わらず、元請は上記事項を「特定元方事業開始報告」として所轄労基署に提出しなければなりません。ただ、行政運用上の解釈として、常時使用する労働者数(下請を含む)が10名未満の場合は提出しなくてよいとされています。

 

 

宮本事務所の労働保険加入サポート


熊本地震の発生により建設業を営んでおられる方は毎日ご多忙な日々をお送りのことと思います。皆様の頑張りが熊本の復興につながりますので、ご活躍を願わずにはいられません。同時に建設業の方には社会保険加入に万全を期していただきたいと思います。労災事故対策に労災保険、人員の確保・維持には雇用保険、社会保険の加入が欠かせません。備えあれば患いなしです。是非この際ご検討ください!

労災保険の対象となる事業は継続事業と有期事業に分けられます。工場や商店、病院ほかほとんどの事業は終了が予定されていませんので継続事業です。一方終了の時期が予定されているのが有期事業で建設事業が有期事業の典型となります。有期事業はさらに単独有期事業と一括有期事業に分けられます。次の条件に該当する場合が一括有期事業でその他は単独有期事業扱いとなります。

 

  1. 一工事の請負額が1億8千万円未満、かつ、概算保険料額が160万円未満の場合
  2. 一括できる工事が、隣接県及び厚生労働大臣が指定した都道府県の区域で行う工事であること
  3. それぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくはその準備の事業であること。
  4. それぞれの事業が、事業の種類を同じくすること。
  5. それぞれの事業に係る労働保険料の納付の事務が一の事務所で取り扱われていること。

さらに、労災保険における単独有期事業や一括有期事業を現場労災というのに対し、事務員や営業部員を対象とする労災保険を事務所労災といいます。事務所労災は労災保険と雇用保険を同時に成立させる一元適用となります。

宮本事務所では契約を締結していただいたお客様を対象に労働保険(労災保険)加入手続きサポートをいたします。手続きにおける流れは下記の通りですが、宮本事務所では申請手続きをすべて電子申請で行うため、ご自分で申請手続きされる場合よりも大幅にご負担が軽減されます。

 

  1. 継続契約の締結(お客様⇔宮本事務所)
  2. 必要書類のメール等での送付(お客様⇒宮本事務所)
  3. 電子申請(宮本事務所⇒労働局、公共職業安定所)
  4. 納付書の送付(宮本事務所⇒お客様)

以下、2.のお客様にご用意いただきたい必要書類を手続き毎にご案内いたします。

1.保険関係成立届(継続)


事業所においてはじめて労災保険に加入するとき必要な手続きです。

労災保険と雇用保険を合わせて労働保険といい、建設業以外では同時に成立させる一元適用なのですが、建設業では二元適用となっていますので、労働保険は雇用保険と労災保険で個別に成立させます。保険関係成立届の期限は労災保険加入義務のある元請工事の工事開始の日の翌日から10日以内となっています。

そもそも建設業では始期と終期のある建設工事ごとに労働(労災)保険関係を成立させることが大原則ですが、概算保険料に相当する額が160万円未満、かつ、請負金額が1億8000万円未満(消費税抜き)の事業については、一括して継続事業(一括有期事業という)と同様な扱いをします。ここでは一括有期事業の流れを解説いたします。

宮本事務所による電子申請にあたっては、事業の種類、事業所所在地、事業所名称、事業主氏名、事業所電話番号、雇用保険被保険者数などの情報が必要です。

 

必要書類

  • 法人登記簿謄本
  • 事業主の世帯全員の住民票の写し(個人事業所の場合)
  • 建物賃貸借契約書写し(必要に応じて)

2.労働保険概算保険料申告書


労働保険に加入すると保険関係が成立した日から50日以内に概算保険料を申告し納付する必要があります。(申告は宮本事務所では電子申請で行います。)

 

概算保険料は一括される有期事業を開始した日から3月31日までの間に使用する労働者に支払う賃金総額の見込額に労災保険料率をかけて計算するのが原則ですが、建設の事業は、その事業の特殊性から、数次の請負により施工されるのが常態ですから、元請事業主が下請負労働者も含めた工事全体の支払賃金総額を正確に把握することは困難な場合もあります。そこで、賃金総額を請負金額から計算する特例が認められています。

 

請負金額×労務費率×労災保険料率=労災保険料

 

 

保険料額が20万円を超え、9月末までに成立した場合には、2~3回の分割納付ができます。

建設事業における労災保険料率と労務費率


労災保険手続を怠っていたとき


建設工事を始まると、一般的に労働者を使用しない工事はありませんので、その事業が開始された日に労災保険を掛けたことになります。ただ、建設業においては元請負人のみを使用者とみなす規定があります。よって、労災保険には自動的に加入しているとはいえ、その成立の日か10日以内に「保険関係成立届」を提出しなければならず、加入手続きがすんでいない間に労災事故が発生した場合には元請負人に費用徴収制度が適用されます。概要は以下の通りです。

  1. 加入手続きについて行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、事業主がこれを行わない期間中に労災事故が発生した場合は保険給付額の100%を徴収する。
  2. 行政機関からの指導等は受けていないが、事業主が事業開始の日から1年を経過してなお加入手続きを行わない期間中に労災事故が発生した場合は保険給付額の40%を徴収する。 

労災保険の特別加入について


労災保険は「労働基準法上の労働者」を対象としていますので、経営者や事業主、一人親方は労災保険の対象となりません。これら労災保険に加入できない「労働者以外の者」に対し、労災保険に加入できるようにする制度を特別加入といいます。

 

  1. 中小事業主等 中小事業主(規模300人以下の事業主等)及びその家族従事者等が労働保険事務組合を通じて加入することができます。
  2. 一人親方等 一人親方その他の自営業者(大工、とび等)がその所属団体を通じて加入することができます。

労災保険の給付


 

業務上又は通勤によるケガで病院にかかった場合、原則としてケガが治るまでの治療は無料で受けられます。

 

業務上又は通勤によるケガの療養で休業し、賃金を受けない日の第4日目以降から休業(補償)給付が支給されます。

 

休業初日から3日間は事業主が労働基準法上の規定に基づく休業補償を行わなければなりません。

 

給付側、給与を概ね日給換算した額の80%です。

 

そのほか、傷病年金や障害(補償)給付、遺族(補償)給付、葬祭給付、介護(補償)給付などがあります。